クルマも建機も、ロボットも
熱処理なしでは………。
「熱処理加工」、一般的には耳慣れない言葉ですが、自動車やオートバイ、建設機械などの心臓部分には、必ずこの熱処理が施されています。熱処理とは、高温に加熱した後の冷却方法によって、鉄鋼の組織や性質を変える処理のこと。熱処理によって鉄鋼は強靱性や伸展性、耐摩耗性、柔軟性などの性質を帯び、機械の心臓部分を支える部品となるのです。鍛冶職人がつくる日本刀などは、熱処理技術を駆使した製品の典型といえます。
山形市銅町にある株式会社伊藤熱処理(業界では「イネツ」の名で通っている)は、東北では数少ない熱処理専門の加工メーカー。イネツがもっとも得意としている熱処理加工は、鋼材の表面を硬く、内部を柔らかく仕上げる浸炭焼入。耐摩耗性や耐疲労性に優れ、衝撃や振動に強いため、自動車のミッションシャフトやクランクシャフトなどに欠かせない処理となっています。熱処理加工には浸炭焼入のほか、ガス軟窒化処理、高周波焼入、真空熱処理などがあり、求められる性質を最大に引き出せる方法で熱処理されます。
こうした熱処理技術全般に熟知しているのが、常務工場長の河又良夫さん。熱処理技能士特級の資格をもち、平成18年厚生労働省認定「現代の名工」にも選ばれています。
![]() 浸炭焼入れを行うため、ガス浸炭炉に部品が入れられる瞬間 |
![]() 左が浸炭焼入前で、右が浸炭焼入後(エンジンシャフトの断面)。 |
大手製造業が認定する
高い技術力と信頼性
イネツでは、河又さんのものづくりに対する姿勢が良きお手本となって、女性社員を含めた全社員が金属熱処理技能士の資格取得者。だれもが専門的な受発注にも対応できる体制となっています。その全社員による総合力で勝ち取ったのが、数々の大手製造業の認定証。イネツの熱処理加工への信頼の証であり、出荷された部品は納入先での検品はなく、そのまま組立に回されます。それだけに社内における検査・管理体制にも万全が期されています。
また、河又さんは浸炭焼入のポイントとなる熱処理油の選定にも尽力し、石油会社の協力のもと最適な熱処理油を探し出し、その情報をオープンにして業界全体の品質向上にも貢献しています。「熱処理加工の重要性は高まる一方です。金属熱処理技能士は、景気に左右されない強力な資格といっていいでしょう。地味ではありますが、ものづくりを核心部分で支えているという誇りが持てる仕事です。」(河又さん)
![]() 加工工場として認定を受けた証の数々 |
![]() 金属顕微鏡による出荷前の最終検査 |







